照り輝く真夏の太陽。
……暑い……
涼しい図書館から一歩外に踏み出すと直ぐに一歩、引き返したくなる衝動に駆られた。
中と外では気温が違いすぎる。
これが逆なら天国なのだろうが……今は灼熱地獄にいるかのようだ。
僕たちは早くこの暑さから逃れるために近くにあるファーストフード店で
昼を済ますことにした。

人間、考えることはみんな同じのようだ。
僕らと同じような境遇に立たされている学生たちがレジの前で長い列を作っていた。
明らかに図書館から来たって感じ……
昼過ぎに出たのでは遅すぎだったようだ。
「どうする?」
慎吾が僕らに尋ねた。
「う〜ん…」
月乃さんは僕に委ねるような顔で見てくる。
結局、僕が決めるような雰囲気になった。
……このフリを返すのは至難の業だ。
真剣に考えて出した答えでも、その結果いかんによっては「やっぱあっちにすればよかったねー」とか
非難的な言葉をごく自然にさりげなーく言われかねないから。
慎吾と二人ならそんなこと気にも留めないのだが……
今日は月乃さんがいる。
適当にするわけにもいかない。
……まっさきに僕が二人に尋ねてればよかった……
……
「……待とっか」
悩んだあげくに出した結論。
「そだね」
月乃さんは屈託が無い笑顔で賛成してくれたが……
慎吾の奴は意味ありげな顔でニヤっと笑っていた。
あのヤロー、僕の心を読んで……
抜かりの無い奴め、まったく。
だがまあいいさ、今から君は僕の稲妻のような怒涛の追求攻撃に、
常に受け身に入らなくてはいけないのだからな(  ̄ー ̄)ニヤリ
彼女の前だ、何気ないことでもうまく言葉を選べよ……フフフフフ……


うまいぐあいに席が空いて、注文した後も待たされることはなかった。
僕らは三人とも同じハンバーガーセットを頼んだ。
これでようやく昼食にありつけるわけだ。
「あ〜、お腹空いたね〜」
語尾を伸ばす月乃さん。
ようやく、って思っていたのは僕だけじゃなかったようで。
それもそのはず、時計を確認するともう12時30分をまわっていた。

「もうすぐ全国模試だねー。二人ともいけそう?」
一通り食べ終わり、ジュースを飲みながら話しをしている。
それは愚問だよ月乃さん。
あんな膨大な範囲の試験、ちょっとやそっと勉強したぐらいで手が出るはずがない。
まったく……半年後の受験までにあんなの全部解けるようになれるのかな?
僕は溜め息を吐いて、それを質問の答えにした。
「ふふ、慎吾くんは?」
「まあ、何とかね」
フッ、慎吾の奴、月乃さんの前だからって強がりやがって。
僕より成績低いくせに。……ちょっとだけだけど。
まあ、ここはそういうことにしておいてやるとしよう。
それにしても、全国模試……嫌な響きだ。
試験、模試、受験、勉強………
これからはこういった単語と毎日向き合うことになるのだろう。
気が滅入るよ。
少し会話が途切れる。
……ここだ!!
このタイミングで例の質問をぶつけてやろう。
何気ない会話の流れの中で、何気なく肝心な事を聞く。
突拍子も無くいきなり聞くよりもこうした方が答えやすいだろう。
「ところでさー、二人はいつから付き合ってるの?」
さあ、答えてもらうとしよう。
「え?何言ってるの和也くん。私たち別に付き合ってなんかいないよ」
平気な顔して平然と答える月乃さん。
……い、いくらなんでも、それでは慎吾が……
落ち込んでいるのではないかと慎吾の方をゆっくり見る。
「お前、何勘違いしてるんだよ」
心配していた慎吾も平然と答える。
「へ?そうなの??だったら何で一緒に勉強なんて……」
「何でって…俺は月乃に誘われたからだけど。
和也も誘って三人で勉強やらないかって」
「へーー、そうなんだ……」
わ、分からん!何で月乃さんは僕たちなんかと勉強を……
頭の良い奴と一緒に、だったらわかるけど……
「ほ、ほら、勉強だってみんなでやった方が楽しいじゃない」
「う、うん、そうだね」
と、納得してみせたが……ますます分からん!
だって、俺たちとあんましゃべったこともないのに……
……
……ま、いっか。


午後からも相も変わらず勉強に勤しむ。
教科書を開くと……まるで暗号文のような問題文がずらりと並んでいる。
……誰だよ、こんなの考えたのは……
ついつい視界に入るAVコーナーに目が行ってしまう。
………
「DVDは後にして、今は勉強がんばろっ!ね?!」
「え?あ、うん」
「うんっ」
月乃さんがやさしく駆り立ててくれる。
………
ん?
……何で僕の考えていることわかったんだ??
DVD見たいなんて一言も言ってないのに……
……はっ!
もしかして僕、”サトラレ”ってやつなのでは……
ま、まさかそんな非科学的な……(古いし
でも、前にも先生に僕の考えてることを見透かされたことが……
「ほーら、また変なこと考えてないで、シャーペン持って」
………
(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル
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