昼休み。
あーー、ようやく午前が終わったーー。
自由参加となっているこの補習。
やる気のある人だけ集まった教室内はいつもと違いどこかピリピリしていた。
黒板、教科書、ノートと視線を変えていく。
当たり前なのであろうこんな行動を教室内にいる生徒全てが行えば異様なものに感じた。
みんな将来を見据えて本気になりだしたってことか…
グオォーーー。
僕は傾れるように机に突っ伏した。
………腹減った…
今日はいつも一緒に食べてた慎吾がいないから、どうしようかなー。
「和也くん」
「ん?」
声のした方へ伏せていた顔を上げる。
呼んだのは月乃さんか。
「一緒にお昼食べない?」
「え?僕と?」
「うん」
以外な誘い。
月乃さんとは図書館に行って以来、親密度が増したとは思うけど……
僕なんかとよりも朝言ってた好きな人ってのと食べればいいのに…
まあいいや断る理由なんてどこにもないし。
「いいよ。食べよう」
「うん!」
……ていうか、願ってもないことだったり。。
前の椅子を拝借して、僕の机の方に向ける。
二つの弁当箱が一つの机上に並ぶ。
月乃さんのは僕のより一回り小さい。
さてと、と蓋を開けようとするが……
……視線を感じる。………ものすごい数の視線……いや、殺気が……
よくそれを探ると教室内だけでなく廊下からも…
「ねえ……他で食べない?」
僕はたまらずこの場を去ることを提案した。
「うん、……そうだね」

僕たちは校舎の裏側にある芝生の上に座った。
木々が並び、それらが木陰を作る。
その木陰に入れば照り輝く太陽の光を遮ってくれて暑さを感じさせない。
風がそよ吹けばとても涼しい。
それにしてもあいかわらず凄い人気だ。
月乃さんと並んでいるだけであれだけの注目を浴びるわけだから。
あんなにモテるのに……
「ねえ、聞いていい?」
「うん、いいよ。何でも聞いて」
「朝、好きな人いるって言ってたけど……何でその人に告白とかしないの?」
「え?…………どうして?」
「いや、ほら、月乃さんって男にすごい人気がある…
っていうかモテるのに、何でかなーって思って」
「………でも、その人が私のこと好きとは限らないし……」
「いや、そんな人はいないと思うよ。うん!」
「………ほんとに?」
「うん!」
「じゃあ、今から告白しちゃおっかな……」
「おお、それがいいよ!そうゆうのは早い方がいいと思うし」
「………」
何故か僕の方をじーっと見つめる月乃さん。
「ん?どうしたの?」
「………和也くんって……」
「ん?」
「……鈍いのね…」
不機嫌そうな顔をして言う。
「??何で?」
「………私の好きな人っていうのは………和也くん……だよ」
………
「…………ふぇ?」
「もし、もしよかったら………私と……」
上目遣いで探るように僕を見る。
言葉を途中で止め、僕が次に話す言葉を待っているようだ。
突然のことでパニックになっている僕。
頭の中ではフニャフニャしたものがやみくもに動き回っている。
な、何か言わないと……
ほんのちょっとだけ心を落ち着かせると、そのフニャフニャしたものの影から
一筋の光が差し込んだ。
「……僕でよければ」


夜。
あの後、何しゃべっていいか分からず無言になってしまったが、
放課後、一緒に帰ったときは照れや蟠りみたいなものは吹き飛んでいて話題も弾んだ。
二人の間のルールみたいなものも作った。
これからは互いのことを名前を呼び捨てにして呼び合うこと。
困ったことや悩みごとがあったら絶対に打ち明けること。
なるべく毎晩、電話で話すこと。
などなど、冗談交じりのことも含めていろいろ決めた。
そして最後に一番大事なこととして、絶対に浮気はしないこと。
これだけは二人、固く誓い合った。
今度の休みにデートの約束までしちゃったり…
うーん、何かいいな、こういうの。
「じゃあ、行ってくるけど、寝るときや外出るときはちゃんと戸締りするのよ」
「わかってるって」
今日から一週間、両親は海外旅行へ出かける。
父さんの会社が夏休みということで10日間の大型連休に入り、
受験生の息子を差し置いて、夫婦みずいらずの旅行。
「じゃあ、行ってくるね」
「ああ、気をつけて」
二人は楽しそうに大きな鞄を持って家を後にした。
これでこの家の中には僕一人なわけだ。
………誘ったら来るかな……
………
いかんいかん!!!どうして僕はこう邪な妄想ばかりをーーー!!!!
頭を掻き毟り、部屋に戻って机に向かった。
あと30分ぐらいで先生が来る。
それまでに残ってる宿題を片付けないと……


カリカリカリカリ
「………」
カリカリカリカリ
「………」
カリカリカリカリ、パタっ
「出来ました」
「はい、どれどれ」
時間的にこの問題で今日は最後か。
終わったら美奈に電話して、風呂入って寝るとしよっと。
「………うん、すごい、正解!この問題、難しかったと思うけどよく解けたね」
「いえ、先生の教え方がうまいからです」
「うふふ、お世辞が上手ね」
「いや、お世辞じゃないですよ」
ほんとにうまいと思う。
なんて言うか……勉強のコツを知ってる気がする。
今まで散々悩んで、挙句投げ出したところも先生に教えてもらったらすんなり分かった。
それでいてこれだけの美人ときたものだ。
ん?それは関係ないか。
「……ねえ、今度、いつデートする?」
ペンを置いて話しだす先生。
「デートって、何か恋人同士見たいな言い方ですね」
「どうして?私たちもう恋人同士じゃない」
………
…………はい?
「何言って……」
「さあ、今日は深夜まで勉強よ!みっちり見てあげるから」
「いや、深夜までって先生帰りはどうするんですか?!電車で来てるんですよね。
それより恋人って……」
「大丈夫よ。今日はここに泊まってくから」
……
………
…………はい?
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