時計の針は今まさに11時を刻もうとしている。
僕の隣にはまだ先生がいる。
これでもうほんとに終電に間に合わない。
………うーん、これは………非常にまずい気が……
「ほら、もう少しかんばろ」
「は、はい」
………
いや、でも、ただ勉強見てもらってるだけだし……
別に問題ないんじゃ……
………いやいや、女の人を一晩泊めるってのは、どうも……
それに、今日、美奈と付き合い始めたばかりじゃないか……
これは裏切り行為なのではないのか?
そうだ!そうだよ!!こんなのいけないに決まってるじゃないか!!
美奈と約束したんだ。浮気は絶対にしないって。
これは浮気じゃないかもしれないけど美奈は……ていうか、誰でもそうは思わないだろう。
……やっぱり帰ってもらおう。
よ、よし……
「あ、あの……」
「ん?どうしたの?何かわからないとこある?」
………
「……いえ、な、何でも……」
「??」
い、言えるかよ!今さら「やっぱり帰って」なんて!!
だいたい、こんなに長い時間、僕のために一生懸命、教えてくれてるんだぞ!
そんな人をこんな時間に追い出すなんて……それこそ男としてやってはいけないことだ!!
うん!
自分にそう言い聞かせ、今はひたすらペンを走らせた。

「よし、じゃあー、今日はここまで!お疲れ様でした」
「はい、ありがとうございました」
僕は机から少し後ろにさがり座りながらだけど感謝をこめてお辞儀をした。
日付はもう変わっている。
先生は両手を上げて伸びをし、そのまま床に倒れこんだ。
先生の綺麗な足が僕の前にさらされる。
そ、そんな無防備な……
「ねえ和也くん!」
「……え?!、、は、はい!!」
「何かおなか空かない?」
「そういえば……」
空いた。めちゃくちゃ。。
「何か軽いものでも作ってあげよっか?」
「いいですよそんな、何かコンビニで買ってきます」
「だめよ、こんな時間に青少年が外に出ちゃ!」
先生はムクッと起き上がる。
「台所借りるね。あるもので適当に作るから。
ほら、和也くんも立って」
「わわっ」
僕は先生に半ば無理やり立たされ下のキッチンに向かった。

………
………先生がエプロン着けて料理をしている。
その姿に……つい見とれてしまう。
肌の露出度が高い服を着ているせいで、前から見たら………裸にエプロン……
………
ドンッ!!
僕は片方の足でもう片方の足をおもいっきり踏んづけた。
「いってーー」
うまい具合に小指にヒット。
「どうしたの?」
「え?!いや、何でも。ははは」
や、やりすぎた……
「もうちょっと待ってって。もうできるから」
「は、はい」
部屋中にいいにおいが立ちこめる。
手際よく調理する先生。
……料理もできるんだな。
才色兼備とは先生みたいな人のことを言うんだろう。
その言葉にぴったり適合する希少な人が今、目の前にいることに
めずらしさみたいなものを感じる。
………それにしても…………小指が痛い。

「はいどうぞ、めしあがれー」
差し出されたのは目玉焼きののった焼きうどん。
う、うまそう。
「いただきます」モグモグ
う、うまい。
すぐさま二回目の箸を進める。
モグモグ
うーん、上にのった目玉焼きの半熟加減が何とも……b
モグモグ
「………」
「ん?、、食べないんですか?」
先生の前にも焼きうどんは置いてあるのに、手をつけようとしない。
ただ、ずっとこっちを見ている。
「………」
すーっと見ている。
「え?」
「………コメントを待ってるんだけど」
コメント?…………おぉ(ポン
「おいしいです。すごく」
食べることに夢中で忘れていた。
「そう、よかったぁ」
ニコって笑う先生。
それを待ってたのか………迂闊だった。
「あっ、飲み物、持ってきますね」
「うん、ありがと」
冷蔵庫の前まで行き、そこから先生の方をチラッと見た。
ゆっくりと箸を動かしている。
……
………
はっ!
だめだ!だめだ!!、、先生を見るとどうしても見とれてしまう。
僕はすばやく冷蔵庫の中から冷えたお茶を取り出し、すばやく二つのコップに注いだ。
「お待たせしました」
「ありがと」
「………」
コップに口をつける先生。
ただ、ただそれだけのことなのに、先生がお茶を一口飲んだだけなのに、、
体が火照る。
どうしようもないほどに……
……
………どうしよう。
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