「ねえ、和也くんて女の子にモテるでしょ」
急に何を言い出すんだ…
「モテませんよ、全然」
「ふ〜ん、………鈍感そうだもんだね」
「どういう意味ですか、それ」
「ふふふ、そのままだよー」
食事を済ませた僕たちはそのまま食卓で話しこむ。
そしてそこで先生のことをまだ何も知らないことに気づく。
大学では法律について勉強していてその中の総則というものがよくわからんとか、
1年ぐらい前にこの近くのカフェでウエイトレスをやっていたこととか、
星に興味があってよく友人と天体観測に行くこととか、
いろいろ話してくれた。
そして僕も僕のことをいろいろ話した。
好きなこと、嫌いなこと、
最近見た映画のこと、最近よく聞くアーティストのこと、
友達のこと、などなど。
そして………言わなくては……
僕には美奈という彼女がいることを。
他のことはすいすい口にできるのにこれだけはどうも切り出しにくい。
どう言い回せばいいのか……わからない。
今日、先生が初めて口にした”恋人”という言葉。
本当に先生の中では僕と付き合ってるってことになってるのか?
もしかして、ただ僕をからかっているだけ?
先生の本意がわからない。
いろんな話しをしても、一番肝心なことが……
「……っぁ」
「お風呂、もらっていい?ご飯食べたら汗かいちゃった」
僕が発声しようとしたらタイミング良く(悪く?)先生が口を開く。
「あっ、いいですよ。場所は…そのドアを開ければわかります。
それとタオルは掛かってるものを適当に使ってください」
「うん、ありがと」
そう言って先生は席を立ち、浴室へ向かう。
くそぉー、結局聞けずじまいじゃないか。
これじゃあ先へ進めないだろーがー。
……ていうか、先ってどっちだ?
ハァー、…何か色々難しいな…
………
しかし…
…お風呂……か
……
………
………何なんだ、この言葉の響きは!!
そこから連想するものは………ハダカ………
………
静かな家の中。
何でこんなに静かなんだ。
半径20mぐらいなら何でも聞き取れそう。
ガラガラガラ
引き戸が動く音がする。
その後に蛇口をひねる音とシャワーの音が……
………
ゴクンッ
唾を飲んだ。
よ、よく考えたら、いや、よく考えなくても、、
この家には今、僕と先生の二人だけしかいないんだよな。
……男と女、二人だけ……女の方はシャワーを浴びてる……
その後に起こることは……
今どきなら小学生でも思いつく……
………
……部屋に戻ってよ。


ピッピッピッ
カチャカチャカチャ
携帯のゲームでもやってみる。
さっき、奮発して月額500円のアプリをダウンロードした。
昔、ファミコンで流行ったRPGだ。
今どきこんなゲーム、と思ったが、やりだすとやめられない。
不思議だ。
そういえば、僕より二つ下の子にファミコンの話しをしたら、「何それ?」
って言われたっけ。
ピロリロリ…
……
………
カチャ
「あー、気持ちよかったーー」
ゴフッ!!
な、何てカッコで出てくるんだ!!
Tシャツ一枚。
たったそれだけで肌を隠している。
「あっ、このTシャツ、和也くんのだよね?!
ごめん、勝手に借りちゃった」
「え、いや、それは全然かまわないんですけど……」
話すとき目のやりどころに困る。
仕方なく視線の先を手に持っていた携帯へ…
……いつの間にか全滅してるし……
セーブしてねぇーー。
……ていうか、そんなのどうでもいいー。
「あ、あの、短パンも貸しましょうか?」
「ん?うーん、………いいや、このままの方が動きやすいし」
こ、断られた!
……お願いしますから穿いてくださいよ。
「ねっ、何やってたの?」
携帯のスピーカーからゲームオーバーのサウンドが流れ続けていた。
「いや、ゲームを……」
「どれどれ」
先生は僕の隣に来て、携帯の小さなディスプレイを覗き込む。
「あっ!これドラ○エ?!わーー、懐かしぃーー」
目の前に先生が……
ち、近いしーーーーー!!!!
お風呂上りの先生の肌はすごく艶やかで……
………触りたい……
いい香りがする。
よ、よく考えれば……ここはベットの上だ。
このまま押し倒したら………どうなるんだろう……
世の中にあるいろんな欲のうち性欲だけは抑えられると思ってたけど……
……無理……かも……
僕の腕は震えながら少しずつ先生の体を包み込もうとしていた。
ああ、ブッタよ、あなたはどうやってこの欲望を抑止できたのですか?
ぜひ教えをこうむりたいです。
……
「何する気?」
先生の視線は携帯のディスプレイのまま。
ど、どうしてわかった??
僕は慌てて、腕を後ろに引っ込めた。
「い、いえ、べ、別に……」
「別に?」
僕の顔を見てやさしく笑う先生。
……
もしかして……
………完全に見透かされてる?
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