ハァー……
あっという間にお盆休みが終わり、今日からまた夏季補習。
朝、いつものように鞄に教科書をつめる。
………もうなんか……行きたいくない。
休もうかな……
休んで家で勉強しようか。
「かずやーー、何やってるのーー、早くしないと遅れるわよーー」
下から母親の大きな声が聞こえる。
まるで僕の心を読んだかのようなタイミング。
………わかったよ……
渋々、僕は学校へ行くことにした。


引き締まった教室内。
今日も、カリカリとシャープペンを走らせる音が際立つ。
連休明けだというのに相も変わらずみんな必死だ。
欠席者もいない。
………ただ一人、美奈を除いて……
どうしたんだろう。
僕と会うのが嫌で予備校の方へ行ったのだろうか。
それとも何か病気にかかって寝込んでるとか。
………
………どうしたんだろう……
僕はそこにはいない美奈の席をただ呆然と眺めていた。


次の日。
今日も美奈は学校に来ていない。
美奈は理由なくさぼるような子ではない。
やっぱり予備校の方に行ってるのかな……
今日学校が終わったら慎吾に聞いてみよう。


トゥルルルル、トゥルルルル……
カチャ
「あっ、もしもし慎吾?!あのさ、月乃ってそっちの予備校来てる?」
「は?どうしんだよ急に……来てないよ、月乃は学校の補習の方に出てるんじゃないのか?」
来てない……
「おい、もしもし和也? それがどうかしたのか?」
「いや、何でもない……それじゃあ」
「おい、和也?! まて……」
ピ
慎吾が何か言いかけてるのに気づいていたけど僕はそのまま電話を切った。
………予備校にも行ってないとなると………風邪でもひいたのかな……
心配になってきた……
電話、かけてみようかな……
………
だめだ、つながらない。
くそっ、なんだよフィルター機能って!そんなの付けるなよ!!
携帯を投げ捨てる。
的外れなところにイライラをぶつけた。


授業中。
勉強に集中できない。
今日も美奈の席は空席のまま。
いったいどうしたんだよ、3日も休むなんて……
ただの夏風邪?それとも………僕のせい?
もしそうなら……
高校三年生の夏、もしかしたら人生で一番大事な時間かもしれない。
それなのに僕なんかのせいでそんな時間を無駄にさせるわけにはいかない。
ただの早とちりかもしれない、ただのうぬぼれかもしれない。
でも、確認しないと……
僕が美奈を傷つけたことに変わりないのだから。


「片瀬さん! ちょっといい?聞きたいことがあるんだ」
「………何」
冷たい目。
その僕を避けるような態度。
「もしかして、美奈から何か聞いてる?」
「聞いてるわよ、あんたが最低だってこと」
やっぱり。
なら話しは早い。
「今、美奈はどうしてる? 何で3日の学校来ないんだ?」
「うるさいわね!そんなこと知らないわよ!」
……嘘だ。
あんなに仲がいい片瀬さんが知らないわけがない。
「知ってるんだろ!教えてくれよ!!」
僕は片瀬さんの両肩をつかむ。
「ちょっ、痛い、 放してよ!」
「あっ、ご、ごめん……」
………少し興奮気味になってしまった。
……でも……君しか頼れる人がいないんだ。
「………」
「………」
「………あんたのせいよ……」
「え?」
「あんたのせいに決まってるでしょ! 今頃慌てるなんてバカじゃないの!!」
僕……せい………
やっぱり……僕のせいだったのか……
「ありがと」
僕は一目散に走り出した。
まだ授業は2限残ってたけど、今はそんなのどうでもいい。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
「え?」
全力で走る僕を片瀬さんは呼び止める。
「ハアハア、 あ、あんた、今美奈に会いに行って、会ってくれると思ってるの?」
「!! …………会ってくれない……かも……
……ていうか、よく考えたら美奈の家、どこにあるかも知らない……」
「はぁー!? あんたバカじゃないの!」
「………」
「………ハァー、しょうがないわね、私が美奈にメールで呼び出してあげるわよ」
「え、………いいの? そんなことしたら……」
「いいわよ。 その代わり! 絶対に美奈を泣かせないこと!約束できる?」
「ああ、約束する」
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